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2024.07.10

“Culture of Integrity”プログラム第5弾を実施しました

 7月5日(金)、法学部国際関係法学科・高柴優貴子教授のゼミ生が主体となって、“Culture of Integrity”プログラム第5弾『ガザは人類の危機なのか?~「良心の産業」を築こう』を実施しました。本プログラムは、国際法を学びながら、価値観やバックグラウンドが異なる人々が置かれる状況を理解し、国際社会で活躍するために必須の“integrity”(誠実・真摯・高潔などを表す言葉)をキーワードに、実践的な感覚を育てることを目的にしています。
 プログラム5回目となる今回は、ゼミ生が今学期を通じて主体的にイベントを企画し、パレスチナ・ガザの現状を多くの人に知ってもらうだけでなく、長期にわたり非人道的状況が続く世界をどうすれば変えていけるのか参加者とともに模索し、どう行動すべきか一人一人の良心に問いかけながら、プログラム参加後の意識と行動変容を促す機会となりました。
 プログラム第一部でゼミ生によるプレゼンテーションを行い、はじめに2023年10月以降9か月にわたり、パレスチナ・ガザ地区の人々がイスラエルにより強いられている肉体・精神的苦痛や人としての尊厳を奪う残虐な行為が横行している状況について、現地の実際の写真やグラフを用いながら悲惨な現状を伝えました。なぜこの状況を止められないのかを探るため、イスラエル・パレスチナ問題の起源を読み解いていき、中東起源の問題ではなく、ヨーロッパ諸国によるユダヤ人迫害の歴史に加担・傍観した政府や人々が引き起こしたことを明らかにしました。迫害の責任と、その結果生まれたユダヤ人難民を引き受けたくない欧米諸国が、「ユダヤ人問題」を中東のパレスチナに押し付けたことが発端となっていたと指摘。また、第二次世界大戦後から現在に至る西側諸国政府の対応にも注目し、ユダヤ人迫害の歴史への負い目も相まって、イスラエルによる入植植民地主義(原住民を追い出しながら、自らの居住区を拡大していく植民地主義)の構造を黙認し、支援を続ける西側諸国政府や大手メディア、企業の対応に疑問を呈しました。その上で、過去のジェノサイドのプロセスから学ばず、自由主義や人権を謳う体制に与する人々が、自らの地位や権力のために協力し合い、産業レベルで行われている殺戮に加担している状況は「人類の危機」であると指摘しました。こうした状況に対して、体制側の抑圧に屈せず声を上げる世界の学生たちの運動についても触れ、同じ時代を生きる私たちには、歴史を作り変えていく責任や、団結して「良心の産業」を築いていく使命があるのではないかと強く訴えかけました。その一環として、ゼミ生たちは、大学に対し、パレスチナの学生や教授を受け入れることや、より多くのグローバルサウスからの留学生を受け入れることを要望しました。
 プログラム第二部では、ゼミ生がパレスチナの詩人・作家で、イスラエル軍の攻撃により昨年12月に亡くなったRefaat Alareer氏の詩“If I must die”を朗読、またパレスチナ系ヨルダン人の若手歌手ダナー・サラー氏が現代に蘇らせたパレスチナ抵抗のフォークソング “Ya Tal3een”の歌と演奏を学内の協力者と共に披露し、会場全体が一体感に包まれました。企画の監修の他、ピアノ・編曲も担当した高柴教授は結びに、「パレスチナ・ガザの現状から、人類の深い闇と同時に、一筋の光も見える。それは、負傷した同胞を救おうとする医療従事者や、ガザの惨状を伝えるために現場に立ち続けるジャーナリストなど、自分の状況を差し置いてでも、苦しんでいる誰かのために、力を尽くす人々の姿である。私たちは、その様なintegrityのある人々の在り方に人類の希望を見出すことができる。本来、人間は他人が苦しむ姿を見て、平然とできるものではない。それができる人は、自分自身が本当に何を求めているかを見失い、人類との接点を喪失しているのではないだろうか。私たちは、パレスチナ・ガザの現状を通して自分自身とも向き合い、自分の良心に問いかけ、自ら声を上げて繋がりを広げていくことで、闇を打ち払う「良心の産業」を一緒に育てていきたい」と来場者へメッセージを送りました。
 参加したゼミ生からは、「問題の本質に気づくことの重要性を実感した」(国際関係法学科2年植田結華さん)「調査が深まるに従い、それまで未知であった問題を理解した時には心が震えた」(法律学科2年伊原遼さん)「無関心こそが世界で起きている人権侵害の一番の加担者なのではないか。大学での学びは、自らの軸を形成していくためにあると実感し、国際法や歴史、メディアとの向き合い方を引き続き学びたい。始めの一歩を踏み出すことには勇気がいるが、社会の理不尽さを言葉にし、多くの協力者を集めることで、社会の理不尽さに対抗できるのではないかと感じた。」(国際関係法学科3年森山和奏さん)といった感想が寄せられました。
 本プログラムを通じて、来場者一人一人が、パレスチナ・ガザの現状とその背景にある歴史や西側諸国政府の対応、今私たちに求められることを学ぶとともに、どう行動すべきか自分の良心に問いかけ、どのようにして力を合わせ「良心の産業」を築いていくべきか、今後の意識や行動変容を促す貴重な機会となりました。