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2025.12.23

【国際文化学部】黒井秋夫氏による講演会「戦争が残す心の傷 ─戦争PTSD──日本兵とその家族の戦後80年──」が開催されました

 12月19日(金)、西南コミュニティセンターホールにて、「戦争が残す心の傷 ― 戦争PTSD ― 日本兵とその家族の戦後80年 ―」と題した講演会が開催され、学内外から多くの参加者が集まりました。本講演会は、国際文化学部・伊藤慎二教授により企画され、戦後80年という節目に、加害と被害の両方の戦争体験の歴史を継承し続ける重要性に焦点をあて、実施されました。
 講演では、「PTSDの復員日本兵と暮らした家族が語り合う会」主宰の黒井秋夫氏が、日中戦争から復員した父親との生活体験をもとに、戦後の日本では、戦争による心の傷(PTSD)が、兵士本人のみならずその家族の人生にも、長期にわたって深刻な影響を及ぼしてきた現実について語られました。また、日本社会が再出発する過程において、政府がそうした現実ときちんと向き合ってこなかった歴史や、現在に至るまでPTSDを抱えた元兵士やその家族に対する実態調査や支援が十分に進んでいない現状についても言及されました。さらに、父親との関係を再構築しようとする自身の歩みを通して、戦争が生み出す「負の連鎖」やその責任の所在、そして戦後80年を経た現在もなお苦しみ続ける人々の存在が浮き彫りにされました。黒井氏は、二度とこのような悲劇を繰り返さないためにも、日本に限らず、世界全体で戦争のない社会を目指さなければならないと強調されました。
 講演後には、参加者から戦争体験によるPTSDの問題、家族への影響、現代社会における平和の在り方などについて、感想や質問が寄せられました。本講演会は、戦争の記憶が次第に風化し、過去の出来事として語られがちな現代社会において、戦争によって生じた心の傷が今なお当事者やその家族の生活に深く影響を及ぼし続けている現実を知る貴重な機会となりました。また、戦争の悲劇を二度と繰り返さないために、私たち一人ひとりが歴史に向き合い、何を考え、どのように行動していくべきかを改めて問い直す意義深い場となりました。
 なお、今回の講演会を機に、2026年2月8日(日)午後1時から、本学コミュニティーセンター会議室にて、「PTSDの日本兵家族会・寄り添う市民の会九州」の第1回例会開催が決定しております。ご関心のある方はぜひご参加ください。